身内提供を選ばなかったワケ。
精子提供には匿名の個人ボランティアのドナーの他に、
身内の提供という選択肢もあります。
男兄弟がいれば一番近い血縁になりますし、
たとえ居なくても父親や親戚に頼むことも出来ます。
血の繋がりを最優先するのであらば、そう選んで居たかもしれません。
それに知っている人なら逆に安心という面もあります。
でも僕たちは全く誰か知らない人の精子を使うことにしました。
なぜ身内にしなかったか?
そもそも最初から身内提供という選択肢は僕にも妻にも頭になかったですね。
一つが、血縁にそこまでこだわっていなかったからです。
僕にとっては妻の血が通った子であることが最優先すべき事項でした。
それに性別変更しようと決めた時から、自分の遺伝子を持った子供は出来ないと覚悟していましたから。
そしてもう一つ。
身内であることが逆に引け目に感じると思ったからです。
兄弟の提供であれば、遺伝子上は妻と兄弟の子ということになります。
普通に考えてみると、僕には耐えられない状況です。
それが父親や他の親族であっても。
確かに血の繋がりは嬉しいし、外見も少なからず似てくるでしょう。
でも、もしいつか状況が変わって、兄弟が「俺の子供だ。」と言ってきたら?
DNA検査をしたら一発で判明してしまいます。
その時に国は僕たちも守ってくれるでしょうか。
いや、してくれないでしょう。
当たり前ですが、子供の人権が一番優先されるはずです。
子供や国は何を見て判断するか、
DNAの結果です。
大事に育ててきた子供が奪われてしまう可能性があるということです。
しかし。
これは身内の提供には限ったことじゃないんですよね。
今後のAIDについて
今ではほぼ全ての人が自分用のスマホや携帯を当たり前のように持っています。
これは10年前には考えられないことでした。
SNSも発達して、今や誰でもどこにいても世界中に情報を発信、受信出来ます。
今後もさらに発展していくでしょうから、
AIDと知った当事者たちは遺伝子上の父親を探すことが今よりも容易になるかと思います。
また海外と同じように日本もAIDで生まれた子供に対して、
出自を知る権利が認可されていく可能性が高いです。
すでにそういった動きは出ていますからね。
まだまだAIDに対しての偏見は多くあります。
生まれてきた子供たちがかわいそうだとか、
実際に当事者が出自を知るために裁判を起こすという事例もあります。
AIDは普通の妊娠出産とは違います。
しかし、間違ったことだとは思いません。
子供を授かった後にその子の為にどう生きていくか、
それが一番大事なのだと思います。